好物を食べたい

いきなり何ぞや、という話だが好物とは一体何を指すのか未だに曖昧だ。恐らくは食べ物を示すのだろうが一番好きな食べ物って?と聞かれた自分の頭で真っ先に思い浮かぶものがある。

髪の毛だ。

フォロワーなら僕がTwitterでベラベラ喋っているのを知っているだろうが、僕は髪の毛が好き。大好き。厳密に言えば過去の自分の髪の毛が好きになる。何故なら他人の髪の毛は食べたことがないから。
もう分かるだろう。僕の好物は食べ物ではない。髪の毛。生産者は僕。消費者も僕。好きな食べ物はなんですか?の答えは僕が昔頭に生やしていたそれです、になる。

まずそんな人が食べられるだけの髪があるのか?短くない?とかいう問はもう写真を見せた方が早いのは自明だろうが載せる勇気も無ければ独占欲的な何某が働いて見せることができないとも言える。過去の自分の髪の毛に対して自分は明らかな執着心がある。引越しを重ねても絶対に手元に置いてある。ROYCE'のチョコレートの詰め合わせに使われていた青い箱の中にそれはある。蓋を開けばシャンプーの香りがするし僕にはご馳走にしか見えない。けどこれが無くなったらもうその味を体験できないから1本ずつちみちみと食べていた。食べていた。食べていたのだ。確かに。

しかし困った事に最近は体が受け付けてくれない。短い1本でも口に含めば喉の奥が腫れるような感覚が訪れるようになった。あの美味しさを味わえない。今正しく生えている自分の髪を適当に切って口に入れても変わりない。食べられなくなっている。が、それはけして髪の毛に限った話ではない。一般に指す食べ物すらあまり美味しくない。亜鉛が足りないとかそういった次元ではなく。

そして僕がまともに「あぁこれ美味い」と一般の食べ物で思える時がある。一緒にいて楽しいと感じる相手との食事だ。その時だけ「美味しい」という感情が芽生える。普段は食事が作業でしかない。サプリメントに逃げようかと思いもするがどうやら健康な食生活の上にサプリメント生活とは成り立つものらしい。推しが言ってた。そうなると否が応でも口に物を運び咀嚼しなくてはならない。毎回食事が楽しいと思えれば変わるのかもしれないが、食事という行動についてあまりプラスなイメージは持てない。飲み会は考えるだけでゾッとする。もしも仲のいい友人がその場にいても緊張で味が分からない。胃袋が縮む。美味しくない。

そもそも微妙に文面から察せるかもしれないが僕の食生活の中に髪の毛が入っているのではなく一種の欲望として髪の毛を食べる事があるという物なので食べることは義務ではない。栄養にはならないしね。けどどうしようもなく食べたいと願う時は来る。今がその衝動に身を任せているような感じ。昇華できたかは書き上がるまでわからない。朝起きてアカウントごと消え去っているかもしれない。

街ですれ違う人の性別見境無しに髪の毛が綺麗ならば目で追ってしまう。美味しそう。そう思ってしまう。そしてその度にまだ自分を犯罪者にしたくないと地面を見て歩く。何なら暗いスマートフォンの自分を見つめて「やっぱ自分の髪の毛が一番!!」と思ったりする。まだ捕まりたくはないらしい。それにそこはしっかりと保っておかないと昨今のクソ野郎と自分が何ら変わらないものになってしまう。思っているだけでもうダメなのかもしれない。

どこにこの文を着地させるか決めないままに進めてしまった。Twitterのアカウントで作れたりすんのかなーと思ったらGoogleアカウントを使ったりID登録しなきゃいけなかったりと思い描いていた物との差はあったが、それを乗り越えてここまで綴ってしまったという事はそういう事なんだろう。多分。

そう言えば以前フォロワーのフォロワーと初対面(今は相互で仲良くさせて頂いてます)の時にこの髪の毛が好き、髪の毛が食べることが好きと話した時になんとそのフォロワーが自身の髪を1本取って(割とイヤイヤな雰囲気)口に含んでくれた。苦い顔をするフォロワーに自分は明らかに興奮(変な意味ではなく)をしていた。
「まずい」
「そう!!!!口当たりは最悪!!テグスを引っ張るような不気味さ!!けど舌の上で転がしたくなる!!!」
「どうすればいいのかわかんない」
「おし!!ここに水があるでしょ!!!まず髪をゆっくり堪能してから喉の奥の方に持っていって!!!水で!!薬を飲み込むように!!!飲む!!!」
「(すっごい渋い顔)」
「ほら!!!どう??どう!!!?」
「わかんない……」
わかんないかぁ。とは思ったが、今までこの話をしてきて聞いてその場で実践したのはこのフォロワーが初めてだった物でひどく感動したのを覚えている。多分帝劇の通路席で推しが降りてきて横で歌った時(まだ経験もしてない)くらいには興奮したと思う。この経験は自分の中でも色濃く残っている。結果何が残ったかと言うと俺はもしかしたら同志を探したいのかもなぁ、と思った事。このフォロワーは別に美味しいとも言わなかったし俺が食えと言った訳でもないのに自分から知らない世界へと苦い顔をしながらも踏み出してくれた事が恐らく嬉しかったのだ。となると、まあそういう結論に至るのもわからなくは無いのかなと思う。所詮自分の視点なので分からないところは分からないのだが。

さて、またも着地点を探して宛もなくさ迷っている。文章とは切り方が分からない。会話もだが。その点髪の毛は良い。喋らないし。いい匂いがするし。色も綺麗。膝に置いていると安心する。なんだ?宗教か?
あぁ〜俺も好物食いてぇ〜〜〜〜〜〜〜体の健康とか関係無しにな まず俺は他人の髪の毛食べた事ないのだけど ちょっと他人の髪の毛を食べるのは怖いよね 指で触るのが味見に近いと思うのだが はぁ 終わんねぇなこの文章 寝ます